2026年10月14日更新|NASA・各国の公式発表にもとづく
人類の新たな足跡を、月の南極へ。
人類は、再び月面への着陸を目指しています。アポロ以来、半世紀ぶりとなる「有人月面着陸」の計画が進行中です。今回の目的地は、月の赤道域ではなく南極域。永久に日が当たらない場所に水の氷が確認されており、将来の月面活動に欠かせない資源として注目されています。
宇宙開発の日程は、技術・安全審査・予算などで更新されます。NASAは2026年に計画を組み直し、最初の有人月面着陸をアルテミスIIIからアルテミスIVへ変更しました。氷の量・濃度・分布や、資源として採って使えるかは、これからの探査で確かめられます。
NASAのアルテミスIVで、アポロ17号(1972年)以来の有人月面着陸を目指します。
4人が月へ向かい、2人が着陸船に乗り換えて月面へ。2人は月を回る軌道で待ちます。
南極付近で地質調査、試料の採取、科学実験を行う計画です。
スペースXとブルー・オリジンの2機種から、2027年の試験結果と準備状況を見て決めます。
Road to the surface
着陸までの5つのステップ
アルテミス計画は、無人の試験飛行から少しずつ段階を上げています。2026年の計画再編で、着陸の前に「地球のまわりでの本番さながらの試験」が1回加わりました。
- アルテミスI2022年11月完了
無人のオリオン宇宙船が月を回って帰還。
- アルテミスII2026年4月完了
4人を乗せて月の裏側を回り、地球へ帰還。
- アルテミスIII2027年(6月以降)準備中
地球を回る軌道で、オリオンと着陸船のドッキングを試験。
- アルテミスIV2028年初頭目標
半世紀以上ぶりの有人月面着陸。2人が南極付近へ。
- アルテミスV2028年後半目標
2回目の有人着陸。その後は年1回ほどのペースを目指す。
アルテミスIIIは「月面着陸の前の有人実証」へ
アルテミスIIIは中止されたのではなく、役割が変わりました。月へは向かわず、地球を回る低い軌道で、オリオン宇宙船と商業月着陸船(スペースXとブルー・オリジンのどちらか、または両方)の接近・ドッキングを試します。
オリオンの有人運用、着陸船とのランデブー・ドッキング、生命維持・通信・推進の連携、新しい宇宙服AxEMUと着陸船の接続などを確かめ、アルテミスIVの着陸のリスクを下げるのが狙いです。2026年6月にクルー4人(NASAのランディ・ブレズニック、フランク・ルビオ、アンドレ・ダグラス、欧州宇宙機関のルカ・パルミターノ)が発表され、10月13日にはSLSロケットのブースターの組み立てを終えました。
Artemis IV mission profile
アルテミスIVの流れ
4人の宇宙飛行士がオリオン宇宙船で月を回る軌道へ向かい、そのうち2人が着陸船に乗り換えて南極付近へ降ります。現在の目標は2028年初頭ですが、確定日ではなく、開発・試験の進み具合で変わる可能性があります。
- 1出発4人がSLSロケットとオリオン宇宙船で地球を出発します。
- 2月を回る軌道で合流オリオンが着陸船とドッキングします。
- 3着陸2人が着陸船に乗り換え、月の南極付近へ降ります。
- 4約1週間の月面活動地質調査、試料の採取、科学実験を行います。
- 5月面から上昇着陸船で軌道へ戻り、オリオンで待つ2人と合流します。
- 6地球へ帰還4人でオリオンに乗り、地球へ戻ります。
Landers & suits
着陸船と宇宙服、民間の技術
月面着陸を実現する技術は、着陸船だけではありません。NASAは2社の着陸船と、民間が開発する新しい宇宙服を組み合わせて使います。アルテミスIVでどちらの着陸船を使うかは、まだ決まっていません。
スターシップHLS

大型宇宙船スターシップを月着陸用にしたもので、高さは約50m。月へ向かう前に、地球を回る軌道で何度も燃料(推進剤)を補給する方式です。もともとはアルテミスIIIの着陸船として選ばれていました。
ブルームーンMK2
NASAが2023年に2社目の有人月着陸船として選んだ、高さ約16mの着陸船です。契約時はアルテミスVでの有人実証が想定されていましたが、計画再編後はスターシップHLSとともにアルテミスIVの候補になっています。
無人の貨物型MK1は、2026年5月末にロケット「ニューグレン」が発射台で爆発した影響で、最初の月着陸が2027年初めにずれ込む見通しです。
月面用の宇宙服 AxEMU
NASAと協力して開発中の、月面用の新しい宇宙服です。アルテミスIIIで着陸船との接続を確かめ、2027年には国際宇宙ステーション(ISS)での実証も予定。アルテミスIVの月面活動で使う計画です。極域の低温、強い明暗差、粉じんの中で安全に動けることが求められます。
Why the south pole
なぜ、月の南極なのか
アポロの着陸地はすべて月の赤道に近い場所でした。今回は、太陽が真横から差す南極域を目指します。光と影がはっきり分かれる地形が、氷と電力という2つの魅力を生んでいます。
- 1太陽の光は、ほぼ真横から月の自転軸はほとんど傾いていないため、南極では太陽が地平線すれすれを回ります(図では角度を誇張しています)。
- 2長く日が当たる尾根高い尾根には、長い期間日が当たり続ける場所があります。太陽光発電や、着陸・拠点づくりに有利です。
- 3永久影深いクレーターの底には日が当たらず、マイナス200℃を下回る場所もあります。冷たい「わな」のように、水などを閉じ込めます。
- 4水の氷永久影の中に水の氷があることが確認されています。量・濃度・分布や、資源として採って使えるかは、これからの探査で調べます。
The world is heading to the Moon
世界も、月を目指している
月を目指しているのは米国だけではありません。各国が長期的な目標を掲げて動き始めているのが、いまの月開発の特徴です。
2030年までに有人月面着陸
長征10号ロケット、有人宇宙船「夢舟」、月着陸船「攬月」を開発しています。2026年2月には、長征10号Aの弾道飛行で夢舟の脱出試験(最も空気の力が大きい時点)に成功し、長征10号の低高度での実証試験も終えました。2026年5月の政府発表でも2030年の目標が改めて示されています。
国際月面研究ステーション(ILRS)
有人着陸とは別の、長期的な月面研究拠点の構想です。2035年までに「基本モデル」、2045年までに「拡張モデル」を整える趣旨が公表されています。
2040年の有人月面ミッション
国家の長期ビジョンとして、2040年までの有人月面ミッションを掲げています。具体的な打上げ日程は公表されていません。
日本人宇宙飛行士2人の月面着陸
2024年4月の日米合意で、将来のアルテミス計画で日本人宇宙飛行士2人が月面に降りる機会が約束されました。日本はJAXAとトヨタが開発する有人の与圧ローバー「ルナクルーザー」を提供します。どのミッションで誰が降りるかは、まだ決まっていません。
表は横にスクロールできます →
| 機関・企業 | 目標時期 | 主な内容 |
|---|---|---|
| NASA | 2028年初頭を目標(変更の可能性あり) | アルテミスIVで、半世紀以上ぶりの有人月面着陸を計画。アルテミスVも2028年後半の着陸を目指す |
| スペースX | 2027年の試験を経て判断 | 有人月着陸船「スターシップHLS」を開発。アルテミスIVで使う着陸船の候補 |
| ブルー・オリジン | 2027年の試験を経て判断 | 有人月着陸船「ブルームーンMK2」を開発。アルテミスIVで使う着陸船の候補。貨物型MK1の初の月着陸は2027年初めの見通し |
| 中国 | 2030年までを目標 | 独自の有人月面着陸(長征10号/夢舟/攬月を開発・試験) |
| 中国主導のILRS | 2035年(基本モデル)/2045年(拡張モデル) | 国際月面研究ステーション(有人着陸とは別の長期研究拠点の構想) |
| インド | 2040年(国家の長期ビジョン/日程は未公表) | 独自の有人月面ミッションを目指す |
| 日本 | 未定 | 2024年の日米合意で、アルテミス計画で日本人2人の月面着陸の機会。与圧ローバー「ルナクルーザー」を提供 |
Technical challenges
技術的な課題
このフェーズには、技術面の課題が多くあります。最大の要点は「信頼性の高い着陸船」。そのうえで、月面で約1週間活動するには、多くの要素を組み合わせて機能させる必要があります。
- 着陸船の信頼性
着陸そのものに加え、運用での実証と安全審査を重ね、有人で使える信頼性を積み上げる。
- 宇宙での燃料補給と管理
どちらの着陸船も、宇宙で燃料を補給して月へ向かう設計。極低温の燃料を長く保つ技術が要る。
- 冗長設計と安全審査
一部が故障しても安全に帰れるよう、予備の系統と手順を用意する。
- 生命維持
約1週間、2人が着陸船で暮らせる空気・水・温度を保つ。
- 宇宙服
低温・強い明暗差・粉じんの中で、長時間安全に動ける装備。
- 電力
太陽が低く影が長い南極で、必要な電気を確保する。
- 熱の制御
日なたと永久影の、極端な温度差に耐える。
- 通信
地球が地平線の近くにしか見えない場所で、通信をつなぐ。
- 放射線と粉じん
地球の磁場に守られない月面での被ばくと、とがった細かい砂(レゴリス)への対策。
着陸できるだけでは、不十分です。月で“生きて働ける”状態を整えることが、次のステップになります。
FAQ
月面着陸のよくある質問
人類が再び月面に降り立つのは、いつですか?
日本人も月面に降りますか?
なぜ月の南極を目指すのですか?
一般の人も月面に行けますか?
出典・参考資料と更新履歴
一次情報・公式資料
- NASA|Artemis IV(2028年初頭を目標/4人搭乗・2人着陸/南極付近で約1週間)
- NASA|Artemis III(2027年・地球低軌道での有人実証)
- NASA|Artemis IIIのブースター組み立て完了(2026年10月13日)
- NASA|2026年のアルテミス計画の再編
- NASA|ブルー・オリジンを2社目の有人月着陸船に選定
- Axiom Space|月面用宇宙服 AxEMU
- english.gov.cn|中国:2030年までの有人月面着陸(2026年5月23日)
- english.gov.cn|ILRS:2035年基本モデル/2045年拡張モデル
- インド政府 Press Information Bureau|2040年までの有人月ミッション
補足報道・参考資料
- NASASpaceFlight|Artemis IIIは2027年6月以降(2026年10月6日)
- Spaceflight Now|ニューグレンの復帰とブルームーンMK1の遅れ(2026年6月30日)
- The Space Review|ニューグレンの発射台での爆発(2026年6月1日)
- Space.com|日本人2人の月面着陸と与圧ローバーの日米合意(2024年4月)
- Inside Outer Space|中国の2026年の有人月計画の進捗
- Wikipedia|Blue Moon(機体の高さ)
- Space Informer|Starship HLS(高さ・エアロックの高さ)
- 通常のブロック構成から、月の未来ハブと同じ月シリーズの編集デザインへ全面的に作り直しました。南極の風景のヒーロー、着陸までの5ステップ、アルテミスIVの流れの図、着陸船の高さ比較、南極の断面図、各国の目標の年表、課題のアイコンを追加。アルテミスIIIのクルー発表と組み立ての進み具合、ブルームーンMK1の遅れ、中国の2026年の試験、日本人2人の月面着陸の日米合意、アルテミスVの目標を追記。企業名・機体名をカタカナ表記にそろえました(初出は英字を併記)。
本ページは、公開情報を整理した独立系の情報ページです。宇宙開発の日程は、技術・安全審査・予算・国際情勢によって変更・延期されることがあります。最新の情報は、NASAや各国の宇宙機関の公式発表で確認してください。図はすべて説明のための模式図・イメージ図です。
