月着陸旅行(Lunar Landing Tour)

スペースXが開発する月面着陸船Starship HLSが月面に着陸するレンダリング画像(NASA提供)
SpaceXが開発する月面着陸船「Starship HLS」の構想図。NASAはSpaceXとBlue Originの2系統の有人月着陸船を開発しており、将来のアルテミス計画で使用する着陸船は開発・準備状況を踏まえて決定されます。©NASA / SpaceX 提供

月面着陸- 人類の新たな足跡を、月の南極へ

人類は、再び月面への着陸を目指しています。
アポロ以来、半世紀ぶりとなる「有人月面着陸」の計画が進行中です。

今回の目的地は、月の赤道域ではなく南極域
月の南極域には水氷が存在する永久影領域が確認されており、将来の月面活動に不可欠な資源として注目されています(ただし、量・濃度・分布や、実際に資源として採取・利用できるかは今後の探査で解明予定)。

※宇宙開発のスケジュールは、技術・安全審査・予算などにより更新されることがあります。NASAは2026年に計画を再編し、最初の有人月面着陸をアルテミスIII→アルテミスIVへ変更しています。

主要プレイヤーと最新動向

機関・企業目標時期主な内容
NASA2028年初頭を目標(※変更あり得る)アルテミスIVで、半世紀以上ぶりの有人月面着陸を計画
Blue Origin2028年以降を視野有人月着陸船「Blue Moon(Mark 2)」を開発。Artemis IV以降で使用される可能性
中国2030年までを目標独自の有人月面着陸(長征10号/夢舟宇宙船/攬月着陸船を開発・試験)
中国主導ILRS2035年(基本モデル)/2045年(拡張モデル)国際月面研究ステーション(有人着陸とは別の長期研究拠点構想)
インド2040年(国家長期ビジョン/日程未公表)独自の有人月面ミッションを目指す

NASA「アルテミスIV」:半世紀以上ぶりの有人月面着陸へ

NASAは2026年の計画再編により、最初の有人月面着陸を「アルテミスIV」で実施する計画です。
当初想定より遅れは出ていますが、準備は進んでいます。

現在の目標時期は2028年初頭です。
4名の宇宙飛行士がオリオン宇宙船で月軌道へ向かい、そのうち2名が有人月着陸船へ乗り換えます。2名は月の南極付近に降り、約1週間にわたって地質調査、サンプル採取、科学実験などを行う計画です。
※2028年は確定日ではなく、開発・試験の進捗により変更される可能性があります(NASA公式内でも表記に幅があります)。

着陸船については、NASAはSpaceXの「Starship HLS」とBlue Originの「Blue Moon」の2系統を開発しています。
アルテミスIVで使用する着陸船は、各システムの試験結果と準備状況を踏まえて決定される予定で、現時点でどちらを使うかは確定していません。
南極域での活動では、水氷などの資源に関わる観測・サンプル採取・環境評価などが重要なテーマになります。


アルテミスIIIは「月面着陸前の有人実証ミッション」へ

アルテミスIIIは中止されたわけではなく、役割が変わりました
2027年に予定されるアルテミスIIIは、月面には向かわず、地球低軌道でオリオン宇宙船と商業月着陸船(SpaceXおよび/またはBlue Origin)の接近・ドッキングなどを検証します。

具体的には、オリオンの有人運用、着陸船とのランデブー・ドッキング、生命維持・通信・推進の統合確認、次世代宇宙服(AxEMU)の確認などを行い、アルテミスIVの有人月面着陸のリスクを下げる狙いです。この実証で得たデータを、次の着陸につなげる計画です。


宇宙服とランダー、民間の技術も活躍

月面着陸を「実現する技術」は、着陸船だけではありません。
月面活動を支える次世代宇宙服も重要な要素です。

NASAは、Axiom Space社と協力して月面用の新型宇宙服「AxEMU」の開発を進めています。
現在のNASA計画では、アルテミスIVの月面活動でAxEMUを使用する方針が示されています。月の極域環境(低温・日照条件・粉じんなど)で安全に活動するための装備が求められます。

さらに、ブルー・オリジン社も注目です。
NASAはブルー・オリジンを2社目の有人月着陸船プロバイダーとして選定しています。契約時にはアルテミスVでの有人実証が想定されていましたが、2026年の計画再編後は、SpaceXとともにアルテミスIV着陸船の候補となっており、同社は着陸船「Blue Moon(Mark 2)」を開発中です。


世界も月を目指している

もちろん、月を目指しているのは米国だけではありません。

とくに中国は、2030年までの有人月面着陸を目標に掲げ、長征10号ロケット、夢舟(有人宇宙船)、攬月(月着陸船)などの開発・試験を進めています(2026年にも中国政府系発表でこの目標が改めて示されています)。

また中国は、有人着陸とは別に、長期的な月面研究拠点として国際月面研究ステーション(ILRS)計画も推進しており、
2035年までに「基本モデル」2045年までに「拡張モデル」の整備を目指す趣旨を公表しています。

一方、インドも国家の長期ビジョンとして2040年の有人月面ミッションを掲げています(具体的な打上げ日程は未公表)。
各国が長期ビジョンのもとに動き始めているのが、いまの月開発の特徴です。


技術的な課題

このフェーズでは、技術面の課題が多くあります。

最大の要点は「信頼性の高い着陸船」です。
着陸そのものに加えて、燃料管理、冗長設計、運用実証、そして安全審査をクリアし、有人運用に耐える信頼性を積み上げる必要があります。

また、月面で約1週間規模の活動を行うには、着陸船の生命維持設備・宇宙服・電力・通信・熱制御・放射線リスク管理・月面粉じん対策などを統合して機能させる必要があります。「降りる」だけでは終わらない、多くの要素が求められます。

つまり、着陸できるだけでは不十分です。
月で“生きて働ける”状態を整えることが、次のステップになります。

出典:

上部へスクロール