サブオービタル超高速移動

超高速旅客輸送 (Suborbital P2P Travel)

東京からニューヨークへ、90分。地球が、一つの都市になる日。

宇宙旅行技術がもたらす究極の恩恵は、地球そのものを再定義することかもしれません。宇宙空間の入り口「サブオービタル軌道」を経由することで、地球上のあらゆる2地点間を、わずか90分以内で結ぶ――。

「ポイント・ツー・ポイント(P2P)超高速輸送」は、国際ビジネス、物流、そして私たちのライフスタイルそのものを根底から変えてしまう、究極の時間革命です。

このページは、そんな夢物語を現実のものにしようと、世界中で繰り広げられる熾烈な開発競争の最前線と、その未来がもたらす世界の変革を探るためのものです。


なぜ90分? – 超高速移動の基本原理

国際宇宙ステーション(ISS)が地球を一周するのにかかる時間は、約90分。これは、空気抵抗がほとんどない宇宙空間を、時速約28,000kmで飛行しているからです。

サブオービタルP2P輸送は、この原理を応用します。ロケットや極超音速機で大気圏の上層部まで一気に上昇し、空気抵抗の少ない空間を滑空することで、大陸間の長距離を、従来の航空機の10倍以上のスピードで移動するのです。


2つの技術アプローチと主要プレイヤー

この時間革命を実現するため、世界中の企業が、大きく分けて2つの異なる技術的アプローチで開発を進めています。

アプローチ①:再利用型ロケット方式 – 宇宙船で、地球を旅する

垂直に打ち上げたロケットで宇宙空間に到達し、弾道軌道を描いて目的地の近くに垂直着陸する、最もダイナミックな方式です。

プレイヤーSpaceX (米国)将来宇宙輸送システム (日本)
機体StarshipASCAシリーズ
構想「世界のどこへでも1時間以内に」。100トンの貨物を90分で輸送する米軍の**「Rocket Cargo」計画**を2026年に実施予定。「地球上のどこでも90分」。単段式再使用型宇宙往還機で、2032年以降に東京-NY間90分の旅客サービスを目指す。
最新動向Starshipの軌道飛行試験を継続中。旅客飛行は2030年代以降か。2025年、米スペースポート・アメリカに開発拠点を設立。政府の支援も受け、開発を加速。
課題乗客が体験する数Gの加速度、離着陸時の騒音、海上プラットフォームの運用コスト。単段式ロケット特有のエンジン性能と機体軽量化という、極めて高い技術的ハードル。

アプローチ②:極超音速航空機方式 – 飛行機で、音速を超える

従来の飛行機のように滑走路から離陸し、大気中の酸素を利用してマッハ5以上で飛行する、より旅客機に近い方式です。

プレイヤーHermeus (米国)Destinus (スイス)DLR (ドイツ)
機体HalcyonDestinus S / LSpaceLiner
構想「NY-パリ間を90分」。タービンとラムジェットを組み合わせた複合サイクルエンジンでマッハ5を目指す。「パリ-NY間を90分」。液体水素を燃料とし、マッハ5〜6で飛行。「豪州-欧州間を90分」。マッハ20で飛行する二段式の極超音速スペースプレーン。
最新動向2024年夏に試験機Mk1が初飛行予定。まずは軍事用無人機で技術を確立し、旅客機へ展開する戦略。試作機の試験飛行を完了。2032〜2035年の量産機納入を目指す。コンセプト研究段階。実現は2040年代以降か。
課題マッハ5を超える飛行時の機体の加熱、エンジンモードの滑らかな切り替え、衝撃波による騒音。水素燃料の安全な貯蔵と供給インフラの整備。複雑な二段式システムのコストと信頼性。

夢の実現を阻む、共通の課題

どちらのアプローチも、商業的な旅客サービスを実現するには、共通の巨大な壁を乗り越える必要があります。

  • 安全性と規制:
    乗客の安全をどう確保するのか。緊急時の脱出システムは?航空法と宇宙法のどちらが適用されるのか?国際的なルール作りが不可欠です。
  • 環境への影響:
    離着陸時の騒音や衝撃波、そして燃料燃焼による大気への影響。これらの問題をクリアするため、発着は海上プラットフォームが主流になると考えられています。
  • 経済性:
    莫大な開発費を回収し、航空券をいくらに設定できるのか。市場調査会社は市場の拡大を予測していますが、最初は軍事・高価値貨物輸送が先行し、旅客サービスが一般化するには長い時間が必要です。

ロードマップ – いつ、私たちは「90分の世界」に住むのか

  • 【Phase 1】貨物と軍事が先行(〜2020年代後半)
    SpaceXと米軍による**「Rocket Cargo」**が、2026年頃に最初の貨物輸送実証を行います。Hermeusなども、まずは軍事用ドローンで技術を確立します。
  • 【Phase 2】試験飛行と技術確立(〜2030年代前半)
    各社の旅客機モデルの無人・有人試験飛行が本格化します。日本の将来宇宙輸送システムも、2032年頃に試験段階に入ることを目指しています。
  • 【Phase 3】限定的な商業運航開始(2030年代後半〜2040年代)
    安全性と経済性の課題をクリアしたプレイヤーから、限定的な商業サービスが始まります。日本の将来宇宙輸送システムは、2040年代の商業化を目標に掲げています。

まとめ – 時間の概念が変わる、その瞬間に向けて

「東京-ニューヨーク間90分」の世界は、もはや単なるSFの夢物語ではありません。それは、世界中の天才たちが、国家の威信と企業の存亡をかけて挑む、リアルな開発競争のゴールです。

最初にそのゴールテープを切るのは、SpaceXの巨大なロケットか、Hermeusの鋭利な翼か、あるいは日本の挑戦者か。その答えはまだ誰にも分かりません。

しかし、一つだけ確かなことは、この革命が実現した時、私たちの「距離」と「時間」の概念は永遠に変わるということです。その歴史的瞬間に向けて、今、世界は静かに、しかし確実に動き出しています。


夢の源泉へ:公式サイトへの羅針盤

➡️ [SpaceX – Starship 公式サイトへ]
➡️ [将来宇宙輸送システム株式会社 公式サイトへ]
➡️ [Hermeus 公式サイトへ]
➡️ [Destinus 公式サイトへ]

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