サブオービタル宇宙旅行は一社体制へ|ヴァージン・ギャラクティック「デルタ・クラス」2026年Q4再開へ

最終更新日:2026年2月19日
本記事は、ヴァージン・ギャラクティック社の公式発表、SEC提出書類、投資家向け資料などの一次情報を基に構成し、必要に応じて信頼できる報道で補足しています。※価格の円換算は便宜上 $1=¥150 で計算しています。為替により変動します。

ヴァージン・ギャラクティックの次世代宇宙船「デルタ・クラス」のコンセプト機体レンダー
次世代機「デルタ・クラス」のコンセプトデザイン(出典:Virgin Galactic)

ライバル”運航停止”で「一社体制」へ——ヴァージン・ギャラクティック、2026年Q4の商業運航再開を目指す

ブルー・オリジン「最低2年」運航停止の衝撃。サブオービタル宇宙旅行の再開に最も近いのは、いまたった1社。

突如訪れた”一社だけの時代”

2026年1月30日、宇宙旅行業界に衝撃が走りました。ジェフ・ベゾス氏率いるブルー・オリジンが、サブオービタル(準軌道)観光ロケット「ニュー・シェパード」の運航を「最低2年間」停止すると発表したのです。理由は、NASAのアルテミス計画に向けた月面着陸機の開発にリソースを集中するためです。

これにより、サブオービタル宇宙旅行を商業運航している企業は事実上ゼロになりました。ニュー・シェパードは2021年の初有人飛行以来、ジェフ・ベゾス本人、俳優ウィリアム・シャトナー、歌手ケイティ・ペリーら延べ98人(ユニーク92人)を宇宙に送り出してきた実績があるだけに、その突然の停止は業界に大きなインパクトを与えました。

そして今、すべての視線が1社に注がれています。リチャード・ブランソン(Richard Branson、以下ブランソン氏)が創業したヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)です。同社は現在、次世代宇宙船「デルタ・クラス(Delta Class)」の開発を急ピッチで進めており、2026年Q4(10〜12月)の商業運航再開を目指しています。ただし、そのQ4初便は研究ミッションであり、いわゆる一般顧客(プライベート宇宙飛行士)のフライトはさらにその6〜8週間後になる見通しです。

出典: Blue Origin「New Shepard to Pause Flights」(2026-01-30/一次)/ Blue Origin「NS-38 Mission(98 humans/92 individuals)」(2026-01-22/一次)/ CNBC「Blue Origin shutters New Shepard」(2026-01-30/二次)


そもそも「サブオービタル宇宙旅行」とは何か

宇宙旅行と聞くと、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在するようなイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、いま最も現実的で、一般の人が最も手に届きやすい宇宙体験が「サブオービタル(準軌道)飛行」です。

サブオービタル飛行とは、地球を周回する軌道には乗らず、放物線を描いて宇宙空間の入り口まで到達し、数分間の無重力を体験して地球に帰還するフライトのことです。宇宙空間での無重力体験は4〜6分間ですが、窓の外には漆黒の宇宙と青い地球の曲面が広がります。多くの搭乗者が「人生観が変わった」と語る、いわゆる「オーバービュー効果(Overview Effect)」を体験できるのが最大の魅力です。


「デルタ・クラス」——新しい宇宙船の全貌

ヴァージン・ギャラクティックが社運を賭けて開発しているのが、次世代宇宙船「デルタ・クラス」です。退役した旧型機「VSS Unity」から大幅に性能が向上しており、同社のビジネスモデルを根本から変える可能性を秘めています。

飛行の仕組み:空中発射方式

デルタ・クラスの飛行方式は「エアローンチ(空中発射)」と呼ばれるユニークなものです。まず母機「イヴ(Eve)」と呼ばれる大型航空機の腹の下に宇宙船を取り付け、滑走路から離陸。高度約15kmで宇宙船を切り離し、そこから宇宙船自身のロケットエンジンに点火して一気に上昇。最高到達点(約88.5km)で数分間の無重力を体験した後、独自の「フェザリング・システム」で大気圏に安全に再突入し、パイロットの操縦でグライダーのように滑走路に着陸します。ロケットのように垂直に打ち上げる方式と比べ、搭乗者の身体的負担が比較的小さいのが特徴です。

旧型機「VSS Unity」との比較

項目VSS Unity(旧型)Delta Class(新型)
乗客定員4名6名
運航頻度(システム全体目標)約月1回週3〜4回(母機の運用制約込み)
月間輸送能力約4名最大72〜96名(上限・理論値)
運用期間2023年6月〜2024年6月2026年Q4〜(予定)
飛行実績有人商業飛行7回テスト飛行前
製造拠点モハヴェ(カリフォルニア)フェニックス(アリゾナ)
出典:Virgin Galactic 公式発表、投資家向け報告書(2025年Q1〜Q3)に基づき作成。運航頻度はシステム全体(母機+宇宙船2機体制)の目標値。
ヴァージン・ギャラクティックのデルタ・クラス製造用ツーリング例(胴体アクセスパネル、翼スキン、前縁ツール)
デルタ・クラスの製造工程で使用されるツーリング例(出典:Virgin Galactic)

旧型機VSS Unityは2023年から2024年にかけて合計7回の商業飛行を行いましたが、メンテナンスに時間がかかり月1回程度が限界でした。デルタ・クラスでは運航頻度の飛躍的な向上が計画されています。

母機イヴ(Eve)のアップグレードは完了しており、CEOマイケル・コルグレイザー氏はQ3 2025決算コールで「連日飛行が可能になり、平均で週3〜4回の稼働を目指す」と述べています。会社が示す経済モデルでは、まずデルタ・クラス2機体制の定常状態(初期ランプアップ後)として年125便規模を想定しており、単純計算では最大で約750席/年(125便×乗客6席)=月平均約60〜65席になります(満席前提の平均)。なお、年商10億ドル(約1,500億円)は、母機を追加し、デルタ機を2機増やす拡張シナリオを前提とした長期ビジョンとして示されています。

出典: Virgin Galactic「Q3 2025 Business Update」(2025-11-13/一次)/ Motley Fool「Q3 2025 Earnings Call Transcript(母機 週3〜4回稼働の言及)」(2025-11-13/二次・決算コール書起し)/ Investing.com「Q2 2025 Earnings Call Transcript(年125便モデルの言及)」(2025-08-14/二次・決算コール書起し)/ Virgin Galactic「Delta Ground Testing Facility」(一次)


2026年のロードマップ——運航再開までのカウントダウン

ヴァージン・ギャラクティックは、2024年6月のVSS Unity最終便(Galactic 07ミッション)以降、約2年間にわたり商業飛行を完全に停止しています。現在は、デルタ・クラスの開発・製造に全リソースを集中させている「仕込み」の時期です。以下が、公式に発表されている2026年の主要マイルストーンです。

時期マイルストーン主な出典
Q1(1〜3月)チケット販売再開(第1トランシェ)Q1・Q3 2025 業績発表、SEC提出書類
3月30日2025年通期決算発表(注目:資金状況と開発進捗)Virgin Galactic IRページ(2026年2月18日付リリース)
Q3(7〜9月)デルタ・クラス飛行試験プログラム開始Q3 2025 業績発表
Q4(10〜12月)初の商業研究フライト(有償の研究ミッション)
※一般顧客フライトではない点に注意
Q3 2025 業績発表
Q4後半〜
2027年初頭
プライベート宇宙飛行士フライト開始
(商業研究初便の6〜8週間後)
Q3 2025 業績発表
出典:Virgin Galactic Q3 2025業績発表(2025年11月13日)、Q1 2025業績発表(2025年5月15日)、SEC提出書類(Exhibit 99.1)等

スケジュール調整の経緯と見通し

注目すべきは、2025年8月のQ2決算発表時に一度スケジュール調整があったことです。当初Q1決算(2025年5月)で「2026年夏(summer)」とされていた研究フライト開始が、Q2(2025年8月)で「2026年秋(fall)」に後ろ倒しになりました。Q2決算の説明によると、原因は機体胴体のBMIカーボン複合材スキン(fuselage skins)の製造に課題が生じたためです。会社側はその影響を「modest(軽微)」と説明しています。

CEO コルグレイザー氏はQ3決算発表(11月)で「用語の変更にすぎない」と説明しましたが、プライベート宇宙飛行士のフライトは商業初便の6〜8週間後となるため、実質的に2027年初頭にずれ込む可能性も出てきました。既存の約700人の予約者(10-K記載)の大半は2027年中に搭乗する見込みとされています。

出典: Virgin Galactic「Q3 2025 Business Update」(2025-11-13/一次)/ Virgin Galactic「Q1 2025 Business Update(”summer 2026″表記)」(2025-05-15/一次)/ Virgin Galactic「Q2 2025 Business Update(”fall 2026″へ変更)」(2025-08-14/一次)/ Investing.com「Q2 2025 Earnings Call Transcript(BMI composite skins課題の言及)」(2025-08-14/二次・決算コール書起し)/ SEC提出書類 Exhibit 99.1(2025-11-13/一次)/ Virgin Galactic「Q4 2025決算日程発表」(2026-02-18/一次)


チケットはいくら? どう買う?——知っておきたい予約の現実

価格:約9,000万円からさらに値上げへ

直近のチケット価格は1席あたり60万ドル(約9,000万円以上)。しかも、販売再開後はこれよりさらに高くなることがCEO自身から示唆されています。「直近の公表価格である60万ドルを上回ると想定している」とコルグレイザー氏は明言しており、販売は「トランシェ(区切り)」ごとに価格を見直し、段階的に値上げしていく方針です。

販売方式:「ウェーブ制」と「ホワイトグローブ」体験

従来の単純なオンライン予約とは異なり、デルタ・クラスのチケット販売は「ウェーブ」と呼ばれる段階的な受付方式を導入します。各ウェーブで受け入れる新規顧客数を制限し、一人ひとりに対して「ハイリー・ビスポーク・エデュケーション・セールスプロセス(高度にカスタマイズされた教育販売プロセス)」と呼ばれる丁寧なオンボーディングを提供します。

これは単にチケットを売るのではなく、宇宙飛行前のトレーニングや健康チェックを含む「旅のプロセス全体」をデザインするという発想です。同社の公式サイト(virgingalactic.com)を通じて受付が行われる見込みです。

2026年Q1に販売再開——しかし既存予約者が優先

販売再開は2026年第1四半期(1〜3月)が予定されています。ただし、すでに約700人の既存予約者がバックログとして存在しており(2024年12月期 年次報告書10-Kに記載)、彼らのフライト消化が最優先です。新規購入者がいつ実際に搭乗できるかは、予約のタイミング次第で2027年後半〜2028年以降になる可能性もあります。高額なチケットを購入しても「今すぐ宇宙に行ける」わけではない点は、理解しておく必要があります。

出典: Space.com「ticket prices higher than $600,000、bespoke sales process」(2025-05-22/二次)/ Virgin Galactic「Form 10-K(約700人の予約、2024年12月期)」(2025-02-26/一次)/ Virgin Galactic「Q3 2025 Business Update」(2025-11-13/一次)/ Virgin Galactic「Q1 2025 Business Update」(2025-05-15/一次)


ブルー・オリジン運航停止の衝撃——そしてライバル不在の意味

2026年1月30日のブルー・オリジンの発表は、業界関係者にとっても「寝耳に水」でした。わずか1週間前(1月22日)に最後のフライト(NS-38)を成功させたばかりで、同社副社長フィル・ジョイス氏は「2026年はニュー・シェパードで変革的な体験を届け続ける」とコメントしていたのです。それが突如として「最低2年停止」に転じました。

停止の背景:ブルー・オリジンの公式説明と報道

ブルー・オリジンは停止の理由として、NASAの月面着陸ミッション「アルテミス」計画への経営資源集中を挙げています。同社はNASAから34億ドル(約5,100億円、NASA公式発表額)の契約を受け、月面着陸機「ブルームーン」を開発中です。

報道では、競合のスペースX(スターシップ)が開発遅延に直面するなか、米政府の月面回帰の国策目標が追い風となり、ブルー・オリジンにとってはニュー・シェパードの観光事業より月開発のほうが桁違いに大きなビジネスチャンスとなった、という文脈で解釈されています。

宇宙業界メディアArs Technicaのシニアエディター、エリック・バーガー氏は「裕福な数十人の宇宙飛行予約者には不都合だが、米国の宇宙産業全体にとってはプラスだ」と評しています。同氏はブルー・オリジンが「やることが多すぎてすべてが遅い」と批判されてきた経緯を指摘し、リソースの集中は合理的な判断との見方を示しました。

「一社体制」は何を意味するか

サブオービタル宇宙旅行マーケットにとっては、成長のアクセルが一時的に弱まりやすい局面です。2社が競い合うことで価格やサービスの改善が進むはずだった市場が、少なくとも当面は実質1社のみという構図になります。

ヴァージン・ギャラクティックにとっては、競合が限られる分だけ価格設定の自由度が高まる一方、業界全体としての信頼性づくりや市場拡大は“複数社が並走する局面”より時間がかかる可能性もあります。利用者側では選択肢が限られるため、条件・契約条項(返金や延期の扱い等)の確認がより重要になります。

ヴァージン・ギャラクティックにとっては、競合なき状態で価格設定の自由度が高まる一方、業界全体としての信頼性構築や市場拡大のペースが鈍る可能性があります。消費者にとっての選択肢の不在はリスクでもあります。

出典: Blue Origin「New Shepard to Pause Flights」(2026-01-30/一次)/ NASA「Blue Origin月面着陸船選定($3.4B)」(2023-05-19/一次)/ SpaceNews「Blue Origin halts New Shepard flights」(2026-01-30/二次)/ CNBC「Blue Origin shutters New Shepard」(2026-01-30/二次)/ Kent Reporter「引用:Eric Berger, Ars Technica」(2026-01-30/二次)/ Blue Origin「New Shepard Experience($150,000デポジット、座席保証なし)」(閲覧日:2026-02-19/一次)


知っておくべきこと——挑戦の裏側にあるリスク

宇宙旅行の商業化は、人類がまだほとんど経験したことのない領域への挑戦です。だからこそ、この挑戦を正しく理解するためには、ポジティブな材料だけでなく、乗り越えるべき課題も知っておく価値があります。

ここで挙げるのは否定ではなく、宇宙旅行というフロンティアを前に「何が難しいのか」を共有するための整理です。

リスク1:スケジュール遅延

ヴァージン・ギャラクティックの歩みを振り返ると、開発・運用の難しさゆえにスケジュールが調整されてきた局面がありました。ブランソン氏は当初「2009年に商業飛行を開始する」と発表していましたが、実際の商業飛行開始は2023年でした。デルタ・クラスの開発でも、2025年8月のQ2決算でBMIカーボン複合材スキンの製造課題が報告され、研究フライト開始時期が「summer」から「fall」へと後ろ倒しになった経緯があります。CEO自身が「すべてが計画通りに進むとは期待していない」と述べている点も、宇宙旅行が“想定外が起こり得る領域”であることを示すものとして押さえておきたいところです。

製造工程の整備と並行して、飛行前に機体システムを地上で統合検証する試験体制も構築されています。

ヴァージン・ギャラクティックのデルタ・クラス地上統合試験装置「IRON BIRD」
デルタ・クラスの地上統合試験設備「IRON BIRD」(出典:Virgin Galactic)

リスク2:2014年の死亡事故の記憶

2014年10月、開発中のスペースシップツー「VSSエンタープライズ」がカリフォルニア上空のテスト飛行中に空中分解し、副操縦士1名が死亡する事故が発生しました。米国運輸安全委員会(NTSB)の調査報告(NTSB/AAR-15/02)によれば、原因はコパイロットによるフェザリング機構ロックの早期解除(人的要因)と、単一の人為ミスが致命的な結果に至ることを防ぐ設計・手順・訓練面の防護が不十分だったという構造的要因の複合です。単なる「機械の誤作動」ではなく、人とシステムの両面に課題があったとNTSBは整理しています。デルタ・クラスではフェザリング・システムを含むすべての安全機構が再設計されていますが、「新型機初飛行」のリスクは常に存在します。

リスク3:資金繰りと負債構造の変化

同社の財務面は、商業運航再開までの期間が長引くほど負担が増えやすいため、慎重に見ておきたいポイントです。2019年のSPAC合併による上場以来、累計20億ドル(約3,000億円)超の損失を計上。2025年第3四半期の現金残高は4億2,400万ドル(約630億円)ですが、四半期ごとの現金消耗(バーンレート)は1億ドル前後で推移しており、現在のバーンレートでは約4四半期分(約1年強)の資金しかない計算になります。

さらに注目すべきは、2025年12月に実施された大規模な資本組み替え(Capital Realignment)です。同社は2027年満期の2.50%転換社債(元本約4億2,500万ドル)のうち約3億5,460万ドルを買い戻し、残額を約7,040万ドルに圧縮しました。代わりに、9.80%の担保付ファーストリーンノート約2億1,250万ドル(満期2028年12月31日)を新規発行。さらに株式・プレファンデッド・ワラント・パーチェス・ワラント(行使価格$6.696、約3,170万株分)も発行しています。

リスク4:規制面の不確実性——FAAは機体を「安全と認証しない」

デルタ・クラスはまだ一度も飛行していない全くの新型機です。テスト飛行で予期せぬ問題が見つかる可能性は十分にあります。

規制面について重要な事実があります。FAAは商業宇宙飛行の機体を「安全だと認証(certify)」しません。航空機の型式証明のような制度とは根本的に異なります。FAAの役割は、打上げ・再突入のライセンス(許可)の発行と、搭乗者へのインフォームド・コンセント(「米国政府はこの機体を人を運ぶのに安全とは認証していない」旨の書面通知・署名義務)が中心です。議会のモラトリアム(2028年まで)により、FAAは搭乗者の安全に関する規制を制定する権限が制限されています。

つまり、宇宙旅行の搭乗者は「自己責任」で飛ぶことを書面で確認する必要があるということです。このことは、ライセンス要件の充足、運用条件の設定、そして万が一の事故時の制度運用(学習期間の扱いなど)が、今後の焦点になることを意味しています。同社の年次報告書(10-K)でも、規制や運用条件に関する不確実性が明示的にリスク要因として記載されています。

リスク5:市場の評価は二分

株価は2026年2月中旬時点で約2.50ドル前後と、2021年のピーク時から大きく下落(約90%超)しています。アナリストの評価も二分されています。直近3アナリストの平均目標株価は約2.77ドル(2025年12月時点)で現在の株価とほぼ同水準ですが、レンジは幅広く、最も強気なゴールドマン・サックスの36ドル(2025年時点のレーティング)から最も弱気なウェルズ・ファーゴの0.75ドル(同)まで極端に分かれています。コンセンサスは「Hold(中立)」です。宇宙旅行の夢が大きい一方で、事業としてはまさに立ち上げ段階にあり、運航再開と運用の安定によって“実行の手触り”が見えてくる局面だと言えます。

出典: Virgin Galactic「Q3 2025 Business Update」(2025-11-13/一次)/ Virgin Galactic「Capital Realignment Transactions(2025年12月9日発表、12月18日実行)」(一次)/ Investing.com「Virgin Galactic repurchases $354.6M(取引詳細)」(2025-12-18/二次)/ Virgin Galactic「Form 10-K」(2025-02-26/一次)/ NTSB「SpaceShipTwo事故調査報告書(NTSB/AAR-15/02)」(2015-07-/一次)/ FAA「Human Space Flight(インフォームド・コンセント制度、”FAA does not certify…”)」(一次)/ FAA「The Facts About FAA Commercial Space Oversight(議会モラトリアム2028年)」(一次)/ Benzinga「SPCE stock price prediction(GS $36・WF $0.75等、2025年時点のレーティング)」(二次)/ WallStreetZen「SPCE Stock Forecast(直近3アナリスト平均$2.77、2025年12月時点)」(二次)


今後の注目ポイント——何を見ればいいのか

批判的な視点は重要ですが、一方で見逃せないポジティブな材料もあります。デルタ・クラスの開発は、公式発表の範囲では概ね予定通りに進行中です。母機イヴのアップグレードも完了し、テスト飛行を再開しています。イタリアのプーリア州に第2のスペースポートを建設する可能性も検討されており、事業拡大の青写真は描かれています。

ブルー・オリジンの運航停止は、ヴァージン・ギャラクティックにとって短期的にはネガティブ(業界全体の信頼低下)に見えますが、中期的には唯一の選択肢としてのブランド価値の向上につながる可能性もあります。

時期注目ポイント
2026年3月30日2025年通期決算発表。資金残高と今後の資金計画、チケット販売開始の具体的アナウンス、資本組み替え後の財務状況に注目。
Q1(1〜3月)チケット販売が実際に開始されるか。第1トランシェの価格と申込数が、市場の需要を測るリトマス試験紙。
Q3(7〜9月)デルタ・クラスの飛行テスト開始。ここが最大の分水嶺。成功すればQ4商業化が現実味を帯び、失敗・延期なら再び先行き不透明に。
Q4(10〜12月)初の商業研究フライト。科学ペイロードを搭載した有償ミッションが実現するか。※これは研究ミッションであり、一般顧客のフライトではない。
Q4後半〜
2027年初頭
プライベート宇宙飛行士のフライト開始。既存の約700人の予約者がようやく宇宙に行ける日。ここまでたどり着けるかがすべて。
出典:Virgin Galactic 各四半期業績発表、SEC提出書類等をもとに作成

出典: Virgin Galactic「Q3 2025 Business Update」(2025-11-13/一次)/ Virgin Galactic「Q4 2025決算日程発表」(2026-02-18/一次)


よくある質問(FAQ)

ヴァージン・ギャラクティックとヴァージン・アトランティックは違うの?

A. はい、全く別の会社です。ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)が宇宙旅行事業を行う会社で、ヴァージン・アトランティック(Virgin Atlantic)は一般的な航空会社です。どちらもリチャード・ブランソン氏のヴァージン・グループに関連していますが、別法人として運営されています。

今から予約すると、いつ行けますか?

A. ヴァージン・ギャラクティックは販売を2026年Q1に再開する見通しですが、約700人の予約待ちがいるため(10-K記載)、新規予約者の搭乗は運航頻度の立ち上がり次第で2027年後半〜2028年以降が現実的になる可能性があります。

ヴァージンは国際的な「宇宙」の定義(100km)に届いていないのでは?

A. その通りです。ヴァージン・ギャラクティックの到達高度は約86〜89km程度で、FAIのカーマン・ライン(100km)には届きません。ただし、米国ではNASAや米空軍が50マイル(約80km)を宇宙の境界とする制度や慣行があり、FAAもこの基準で宇宙飛行参加者を認定してきました。一方、ブルー・オリジンのニュー・シェパードは100kmを超えます。どちらの基準を重視するかは個人の判断ですが、搭乗者が体験する無重力や地球の景色には大きな差はないとされています。

FAAは宇宙船の安全を保証してくれるの?

A. いいえ。FAAは商業宇宙飛行の機体を「安全だと認証」しません。航空機の型式証明とは異なり、FAAの役割は打上げ・再突入のライセンス発行と、搭乗者へのインフォームド・コンセント(リスク告知と同意署名の義務)が中心です。搭乗者は「米国政府はこの機体を安全とは認証していない」旨の書面に署名したうえで飛行に参加します。議会のモラトリアム(2028年まで)により、FAAの搭乗者安全規制の権限は制限されています。


「約9,000万円の夢」のゆくえ

ヴァージン・ギャラクティックの挑戦は、宇宙旅行の歴史において極めて重要な転換点にあります。ブルー・オリジンの運航停止により、商業サブオービタル宇宙旅行の再開に最も近い唯一の企業となりました。しかし、その道のりは決して平坦ではありません。スケジュール遅延のリスク、変化した負債構造、まだ飛んだことのない新型機。すべてが2026年後半のテスト飛行にかかっています。

それでも、世界中の約700人が待ち続けているという事実は、宇宙への根源的な憧れの強さを物語っています。約9,000万円以上を払ってでも宇宙に行きたいという人がそれだけいるのです。

「宇宙は一部の宇宙飛行士のものではなく、すべての人のもの」——ブランソン氏が掲げてきたそのビジョンの実現は、2026年Q4を境に、いよいよ現実味を帯びるか、あるいは再び遠のくか。答えが出る日は、もうすぐそこまで来ています。


出典・参考情報

【一次情報(公式・公的機関・SEC提出書類)】

【二次情報(報道・解説・決算コール書起し)】

※ 最新情報や詳細は必ず公式サイトをご確認ください。本記事は投資助言ではありません。

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