MISSION DESIGN / 探査の選択

探査機は天体をどう調べる?

すれ違うだけ? 何度も回る? 降りて触れる? 探査方式を選んで、得られるデータと通信の遅れを比べよう。

イラスト+体験入門から専門へ
赤い惑星に接近する探査機、周回機、着陸機と地球に戻る小型カプセルの模式図。火星探査の実績や計画を一枚の事実として示すものではありません。
赤い惑星に接近する探査機、周回機、着陸機と地球に戻る小型カプセルの模式図。火星探査の実績や計画を一枚の事実として示すものではありません。

30秒でわかる答え

探査機は天体を通り過ぎて撮影することも、周りを回って長く調べることも、地面に降りて分析することもできます。試料を地球ちきゅうに持ち帰るにはさらに多くの工程が必要です。

近づいて観測
フライバイ短い接近機会にデータを取得
周回して観測
オービター長期・広域・反復観測
地表で調査
着陸機・ローバー特定地点を直接分析
試料帰還
採取+帰還工程は多いが、地球で詳しく分析できる

ILLUSTRATED JOURNEY

4枚の絵で、しくみをつかむ

絵を順に追い、何が原因で何が起きるかを確かめましょう。図は原理を表す模式図です。

接近して惑星の脇を通り抜けるフライバイ軌道模式図。
01 / FLYBY

近くを通り過ぎながら観測する

探査機は天体に近づき、通過する間に画像やスペクトルなどを取得します。

周回のための減速燃料を節約できる場合があります。

惑星を周回し複数回観測するオービターの模式図。
02 / ORBITER

周回して何度も調べる

対象の周囲で軌道に入り、時間をかけて各場所や季節の変化を調べます。

周回に入るための減速などが必要です。

地表で小型ローバーと分析機器が岩石を調べる模式図。
03 / LANDER

降りて地面を測る

着陸機・ローバーは岩や土を接近して撮影し、分光計などで成分を調べます。

着陸地点は限られ、着陸には減速・安全対策が必要です。

小惑星試料を密封容器に回収して地球帰還カプセルへ納める模式図。
04 / SAMPLE RETURN

試料を持ち帰り、地球で調べる

探査機が回収した試料を封入して地球ちきゅうへ届ければ、高性能な地上の装置で繰り返し分析できます。

はやぶさ2が小惑星リュウグウの試料を2020年に地球へ届けました。火星からの試料帰還とは別の計画です。

TOUCH AND DISCOVER

探査方式を選んで、集められる情報を比べよう

探査方式を切り替えて比べましょう。地球と探査機の距離を変えると、指令が届くまで何分かかるかも確かめられます。

MISSION PROFILE / CONCEPT周回探査
地球同じ天体を何度も観測

周回に入れば長期間の観測ができます。減速して軌道に捕まるための設計が必要です。

取得しやすいデータ地形・季節変化
大きな課題周回軌道への投入
電波の片道所要時間約8分19秒
理論上の往復時間約16分38秒

光速による伝搬だけを計算。地球・火星の現在の距離ではありません。実際の指令処理・確認にはさらに時間がかかります。

LEARN AT YOUR LEVEL

宇宙のふしぎを、もう少し。

入門から少し専門的な話題まで。4つの段階で、知っておきたいポイントを短く紹介します。

入門

探査機は見たり、降りたりする

知りたいことによって「通る・回る・降りる・持ち帰る」を選びます。

  • 通り過ぎる探査機は短い接近時間に多くの写真を撮ることがある。
  • 着陸した探査機は地面を直接調べられるが、観測かんそくできる場所が限られる。
基礎

調べ方が違えば、道具も違う

遠くから測る方法と、接触して直接測る方法があります。

  • カメラは画像、分光計は光の波長はちょうごとの強さから成分などの手がかりを得る。
  • レーダーは自分で電波を出して反射を測る。
  • 試料帰還では地球ちきゅうの研究室で詳細な再分析ができる。
発展

探査計画のむずかしさを比べる

データを多く得られる方式ほど、必ずしも簡単なわけではありません。

  • 周回機は到着時に減速して重力に捕まる必要がある場合が多い。
  • 着陸機は大気や重力・地形の条件に合わせて降下・減速する。
  • 試料帰還は採取・保管・帰路・地球ちきゅう受入れまで別々の成功条件がある。
専門

光の伝わる時間と観測の証拠

地球ちきゅうの指令が届くまでには、距離に応じた光の伝搬時間が必要です。

t_oneway = d / c ; t_roundtrip ≈ 2d / c (処理・応答時間を除く)

  • 片道通信時間 = 距離 / 光速。指令の送信時刻と実行時刻は一致しない。
  • 遥か遠くのローバーの運用では、その場で判断できる自律性と事前計画が重要。
  • 科学品質には較正、時刻管理、位置情報、測定の不確かさ、試料汚染の管理が欠かせない。

往復通信時間の式は往路・復路の距離変化が小さい場合の近似です。

1 QUESTION CHECK

図のあとに、1問だけ

小惑星の石を地球の研究室で直接詳しく調べたいとき必要なのは?

答えを1つ選んでください。

COMMON QUESTIONS

よくある誤解

探査機の撮影写真だけで岩石の組成は分かる?
色やスペクトルから成分の手がかりは得られますが、写真だけで詳細な化学組成を必ず決められるわけではありません。
地球から遠隔操縦すれば、リアルタイムで動かせる?
いいえ。距離が遠いと、電波が届くまでに時間がかかります。そのため、探査機の自律機能や、あらかじめ決めておいた指令が欠かせません。
火星の土がすでに地球へ持ち帰られた?
いいえ、まだです。この教材で紹介した試料帰還の実績は、小惑星リュウグウの例です。火星からの試料帰還は、まだ実現していません。

科学的な前提と出典

通信距離のスライダーは、天体間の現在の実測距離ではない仮想値です。小惑星からの試料帰還(はやぶさ2の2020年の実績)と、火星からの試料帰還の計画を区別しています。計算は真空中の一定の光速・一定の距離での片道/近似往復の伝搬時間で、通信機材の処理遅延や電波の品質は省いています。図は実寸ではなく、軌道図でもありません。

資料確認日:2026-10-16

上部へスクロール