あなたは星のかけら

体の元素は、宇宙のどこで生まれた?

粒1つ=体の1000分の1

重さでは約8割が「重い星」、原子の数では約6割が「ビッグバン」生まれ

重さで量ると
原子の数では
  • ビッグバン
  • 重い星
  • 軽い星
  • 白色矮星
  • 中性子星

体をつくる原子は、あなたが生まれるずっと前に、宇宙のどこかで生まれました。水素は138億年前、宇宙のはじまりに。酸素は重い星の中でつくられ、その星が最期に起こした大爆発で宇宙にまかれました。生まれた場所ごとに色を分けて、あなたの体を組み立て直してみます。

数字は出典つき。推定値には幅があります(確認日:2026年10月5日)

30秒で答えると

体の重さのおよそ9割は、星の中でつくられた材料です。残りの約1割は水素で、こちらは星が生まれるより前、宇宙のはじまりにできました。

ところが、原子を1個ずつ数え直すと話がひっくり返ります。体の原子の約6割は、宇宙のはじまりにできた水素なのです。

重さで量るか、数で数えるか

大人の体重の5〜6割ほどは水です。水の分子は、重い酸素原子1個と、軽い水素原子2個でできています。重さで量れば酸素が主役。1個ずつ数えれば水素が主役。同じ体なのに、数え方しだいで「宇宙のどこ生まれが多いか」が入れ替わります。

数え方を切り替えてみてください(図の下のボタンでも切り替えられます)。

数字で見る(重さと原子の数)
生まれた場所ごとの、体の材料の割合
生まれた場所重さで量ると原子の数では
ビッグバン(宇宙のはじまり)約10%約61%
重い星約78%約32%
年老いた軽い星約12%約6%
白色矮星の爆発約0.4%約0.06%
中性子星の合体など0.01%未満0.01%未満

体の重さの99%以上を占める11の元素(酸素・炭素・水素・窒素・カルシウム・リンなど)から計算した推定です。資料によって数%動きますが、「重さで約8割が重い星」「原子の数で約6割がビッグバン」は変わりません。計算方法はページの最後にあります。

5つの生まれた場所をたどる

宇宙の歴史の順に、体の材料が生まれた場所を訪ねます。図では、その場所で生まれた粒だけが光ります。

1138億年前、最初の数分間

宇宙のはじまり(ビッグバン)

宇宙が生まれた直後、熱くて濃い最初の数分間に、水素とヘリウムの原子核ができました。それから最初の星が輝きはじめるまでの1億年あまり、宇宙には水素とヘリウムと、ごくわずかなリチウムしかありませんでした。あなたの体の水素は、そのころから星に使われずに残ってきた、宇宙でいちばん古い材料です。

体のどこに
水(H₂O)の「H」。たんぱく質や脂肪、DNAなど、体のほとんどの分子にも入っています
体の中の割合
重さで約10%/原子の数で約61%

2最初の星が輝いたころから、今も

重い星の一生と大爆発

太陽の8倍より重い星は、中心で水素、ヘリウムと燃やし進めながら、炭素、酸素、ケイ素と、より重い元素を順につくっていきます。中心に鉄がたまると、星は自分の重さを支えきれずに崩れ、その多くが超新星爆発を起こします。この爆発と、生きているあいだに吹き出す強い風が、星の中でできた元素を宇宙にまき散らしました。

体のどこに
水の「O」(体の重さの約3分の2は酸素)。骨や歯のカルシウムの約4分の3。DNAや骨のリン、カリウム、マグネシウムなど
体の中の割合
重さで約78%/原子の数で約32%

3何十億年もかけて、今も

年老いた軽い星

太陽くらいの軽い星(太陽の8倍より軽い星)は、年老いると大きくふくらんで赤色巨星になり、外側のガスをゆっくり宇宙へ放します。このとき、星の内側でつくられた炭素や窒素も一緒に運び出されました。太陽も約50億年後には赤色巨星になりはじめ、やがて同じように外側のガスを放つと考えられています。

体のどこに
体の有機物の骨組みになる炭素の約半分。たんぱく質やDNAに欠かせない窒素の約4分の3
体の中の割合
重さで約12%/原子の数で約6%

4軽い星が燃え尽きたあとで

白色矮星の爆発

軽い星が燃え尽きると、地球ほどの大きさに縮んだ「白色矮星」が残ります。すぐそばに別の星があると、ガスを受け取ったり、白色矮星どうしで合体したりして、ある日、星ごと吹き飛ぶ大爆発(Ia型超新星)を起こすことがあります。この爆発は、鉄をたくさんつくります。

体のどこに
体全体の鉄(体重70kgで約4g、1円玉4枚ほど。多くは血液で酸素を運ぶヘモグロビンに)。そのうち白色矮星がつくった分は、研究によって約3〜7割と幅があります。骨のカルシウムの約4分の1も
体の中の割合
重さで約0.4%/原子の数で約0.06%

5重い星の亡きがらどうしが出会うとき

中性子星の合体など

重い星が爆発したあとに残る中性子星は、太陽より重いのに直径20kmほど。2つの中性子星がぶつかり合うと、原子核に中性子が一気に飛び込む反応(rプロセス)が起きて、金やプラチナ、ヨウ素などの重い元素が生まれます。2017年、日本のすばる望遠鏡などが、この「元素の工場」が放つ光をとらえました。

体のどこに
甲状腺ホルモンに欠かせないヨウ素(体全体で約15〜20mg、大部分は甲状腺に)。ごくわずかな金(体重70kgで約0.2mg、1円玉の5000分の1)
体の中の割合
重さでも原子の数でも0.01%未満。図の粒(体の1000分の1)には、1つも届きません

46億年前から、今日まで

そして、あなたへ

何世代もの星がまいた材料は、宇宙のガスや塵(ちり)に混ざっていきました。約46億年前、その雲の一部が縮んで、太陽と地球が生まれます。地球の生命はその材料で体をつくり、あなたも今日、食べ物と水と空気からそれを受け取っています。

材料は、宇宙の5つの場所から。組み立てたのは、地球の生命です。

宇宙の歴史を1年に縮めると、太陽と地球が生まれたのは9月のはじめ。宇宙カレンダーで見る

この発見をした人たち

  1. 1925

    セシリア・ペイン:星は、ほとんど水素でできている

    ハーバード大学天文台で研究していた大学院生のセシリア・ペインは、星の光を色ごとに分けた記録(スペクトル)を調べ、星はほとんど水素とヘリウムでできている、という計算結果を得ました。当時の常識は「星は地球と似た材料でできている」。権威ある天文学者ヘンリー・ノリス・ラッセルはこの結果を「明らかにありえない」と退け、ペインは博士論文に「ほぼ確実に本当ではない」と書き添えました。4年後、ラッセル自身が別の方法で同じ結論にたどり着きます。1976年、ペインはアメリカ天文学会から、そのラッセルの名を冠した賞を贈られました。

  2. 1957

    4人の論文:元素は、星の中でつくられる

    マーガレット・バービッジ、ジェフリー・バービッジ、ウィリアム・ファウラー、フレッド・ホイルの4人は、水素とヘリウムより重い元素の多くが、星の中のいくつもの反応でつくられる道すじを1本の論文にまとめました。4人の頭文字から「B²FH論文」と呼ばれ、ファウラーは1983年にノーベル物理学賞を受けています。

  3. 2017

    日本の観測チーム:元素の工場の光をとらえる

    重力波望遠鏡が2つの中性子星の合体をとらえると、すばる望遠鏡を使う日本の観測チーム「J-GEM」など世界中の望遠鏡がその方向を観測し、合体のあとに輝く光(キロノバ)をとらえました。明るさや色の変わり方は、金やプラチナなどの重い元素ができるという予想とよく合っていました。

  4. 2020

    小林千晶さん:元素ごとの「生まれた場所」を1枚の周期表に

    英国ハートフォードシャー大学の小林千晶さんたちは、炭素からウランまでの元素が、どの種類の星から来たかを計算し、1枚の周期表にまとめました。小林さんは「水素を除けば、1種類の星だけでつくられる元素はない」と述べています。このページの割合も、こうした研究にもとづく推定です。

まだ分かっていないこと

このページの割合は、銀河の中で星が生まれては死んでいく歴史を計算した「モデル」による推定です(2026年時点の研究)。研究が進めば、数字は変わることがあります。

金は、どこで生まれたのか

2017年の観測で、中性子星の合体で重い元素がつくられた強い証拠が得られました(金そのものを直接見つけたわけではありません)。ただ、宇宙にある金の量や、宇宙の初期に生まれた古い星にすでに重い元素があることを、中性子星の合体だけで説明できるかは議論が続いています。2020年の小林さんらの計算では、銀はむしろ多すぎ、金は足りませんでした。2025年には、強い磁場をもつ中性子星(マグネター)の巨大な爆発が、こうした重い元素の1〜10%をつくっている可能性がある、という研究も発表されています。

リンが、計算では足りない

DNAや骨に欠かせないリン。星の中の反応から計算したリンの量は、実際の星で観測される量より少なく、計算上の量を約2.75倍にしないと合わないという報告があります。

鉄の「取り分」には大きな幅がある

体の鉄のうち、白色矮星の爆発がつくった分は約3〜7割。研究によって、見積もりがここまで違います。

よくある誤解

「星のかけら」は、流れ星や隕石のこと?

違います。体の原子(の芯)が、昔の星の中や爆発で生まれた、という意味です。ただし「本物の星くず」も実在します。「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから持ち帰った砂からは、太陽が生まれる前の星がまいた粒(プレソーラー粒子)が見つかっています。

体の原子は、全部が星でつくられた?

いいえ。原子の数で約6割を占める水素は、星ではなく宇宙のはじまりにできました。星でつくられたのは、水素以外の元素のほとんどです。

星がつくったのは「原子」?

正確には、原子の中心にある原子核です。原子核が電子をまとって原子になったのは、温度が下がってからのこと。このページでは、わかりやすさのために「原子が生まれた」と書いています。

体の原子は、一生同じ?

いいえ。体の原子の多くは、食べ物や水、呼吸を通して少しずつ入れ替わっています(長いあいだ入れ替わらない部分もあります)。入れ替わっても、その原子が宇宙のどこで生まれたかは変わりません。

体の金を集めたら、どれくらい?

体重70kgの人の金は約0.2mg。1円玉(1g)の5000分の1ほどで、目で見るのも難しい量です。

元素の割合は、人によって違う?

少し違います。体の水分や骨の量などで割合は変わりますし、資料によっても数%の差があります。このページの数字は、代表的な値から計算した目安です。

もっと詳しく知りたい方へ

このページは入口です。くわしい解説は、研究機関や学会のページへどうぞ。

データと計算方法

体の元素の重さの割合は、化学の教科書などで広く使われる代表値(酸素65%、炭素18.5%、水素9.5%、窒素3.2%、カルシウム1.5%、リン1.0%、カリウム0.4%、硫黄0.3%、ナトリウム0.2%、塩素0.2%、マグネシウム0.1%)を使いました。原子の数は、それぞれの重さを原子量で割って求めています。資料によって数%の差があり(例:窒素2.6%、カルシウム1.3%とする資料もあります)、別の値で計算しても「重さで約8割が重い星」「原子の数で約6割がビッグバン」は変わりません。

元素ごとの生まれた場所は、Johnson(2019)の分類と、Kobayashiほか(2020)、Fioreほか(2024)の見積もりにもとづく近似です。水素=ビッグバン。酸素・リン・カリウム・硫黄・ナトリウム・塩素・マグネシウム=重い星。炭素=重い星と軽い星が半分ずつ。窒素=軽い星4分の3、重い星4分の1。カルシウム=重い星4分の3、白色矮星4分の1。鉄・ヨウ素・金などの微量元素は体重の0.01%に満たないため、図の粒には入れていません。

図の粒は1000個で、1つが体の1000分の1(重さ、または原子の数)を表します。粒の位置は模式的なもので、元素が体のどこにあるかは表していません(鉄とヨウ素の注記を除く)。数値は「体重70kgの場合」で示したものがあります。

科学的な記述の確認日:2026年10月5日

出典

  1. 体の元素組成の代表値:Chang, R. (2007) Chemistry, 9th ed. McGraw-Hill, p.52 ほか(表の写し)。Wikipedia「Composition of the human body」(鉄・ヨウ素・金の量、原子の数の割合)
  2. 体の鉄・ヨウ素の量:アメリカ国立衛生研究所(NIH)栄養補助食品局(鉄、ヨウ素)
  3. Johnson, J. A. (2019) Populating the periodic table: Nucleosynthesis of the elements. Science 363, 474.(オハイオ州立大学の紹介記事)
  4. Kobayashi, C., Karakas, A. I. & Lugaro, M. (2020) The Origin of Elements from Carbon to Uranium. The Astrophysical Journal 900, 179.(arXiv:2008.04660、発表資料)
  5. Fiore, F. ほか (2024) A Census of Sun’s Ancestors and their Contributions to the Solar System Chemical Composition. Astronomy & Astrophysics 691, A46.(arXiv:2406.08036)
  6. Timmes, F. X., Woosley, S. E. & Weaver, T. A. (1995) Galactic Chemical Evolution: Hydrogen Through Zinc. The Astrophysical Journal Supplement 98, 617.(arXiv:astro-ph/9411003)
  7. Patel, A. ほか (2025) Direct Evidence for r-process Nucleosynthesis in Delayed MeV Emission from the SGR 1806-20 Magnetar Giant Flare. The Astrophysical Journal Letters 984.(シモンズ財団の発表)
  8. Maas, Z. G., Cescutti, G. & Pilachowski, C. A. (2019) Phosphorus Abundances in the Hyades and Galactic Disk. The Astronomical Journal 158, 219.(arXiv:1910.00044)
  9. 国立天文台ハワイ観測所 (2017)「重力波天体が放つ光を初観測 ―日本の望遠鏡群が捉えた重元素の誕生の現場―」(すばる望遠鏡)
  10. 田中雅臣 (2021)「中性子星合体と重元素の起源」天文月報 114巻1号(日本天文学会)
  11. Barosch, J. ほか (2022) Presolar Stardust in Asteroid Ryugu. The Astrophysical Journal Letters 935, L3.(カーネギー研究所の紹介)
  12. Burbidge, E. M., Burbidge, G. R., Fowler, W. A. & Hoyle, F. (1957) Synthesis of the Elements in Stars. Reviews of Modern Physics 29, 547.
  13. セシリア・ペインの経歴(アメリカ自然史博物館)

本ページは、国立天文台・JAXA・NASAなどとは無関係の、宇宙旅行.jpによる解説です。

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