ORBIT LAB / 地球を回る

人工衛星が落ちない理由と軌道力学

衛星えいせいは落ちているのに、地面にぶつからない? 高さ・横向きの速さ・加速を変え、軌道を描いてみよう。

イラスト+体験入門から専門へ
地球の周りに円軌道と楕円軌道を描き、衛星の横向き速度と地球向きの重力を矢印で示す模式図。地球半径に対する高さ・軌道は模式化されています。
地球の周りに円軌道と楕円軌道を描き、衛星の横向き速度と地球向きの重力を矢印で示す模式図。地球半径に対する高さ・軌道は模式化されています。

30秒でわかる答え

衛星えいせいは重力で地球ちきゅうへ向かって落ち続けています。しかし横向きに十分な速さがあると、落ちるあいだに地面も丸みに沿って遠ざかるため、地面に届かず地球ちきゅうの周りを回り続けます。止まって浮いているわけではありません。

地球近くの衛星
自由落下重力で軌道が曲がる
高度400 kmの円軌道
約7.67 km/s地球を真球とみなす二体近似
同高度の周期
約92分地球の自転や空気抵抗は無視
進行方向の加速
遠地点が変わる一瞬の噴射による軌道変更モデル

ILLUSTRATED JOURNEY

4枚の絵で、しくみをつかむ

絵を順に追い、何が原因で何が起きるかを確かめましょう。図は原理を表す模式図です。

ニュートンの砲弾の例で横向き速度が増えるにつれ落下点が遠ざかる模式図。
01 / NEWTON

横に投げるほど遠くへ

横向きに投げた物体も重力で落下します。速さを増やすと、地球ちきゅうの曲がった地面に届きにくくなります。

大気抵抗がない高い場所を仮定します。

衛星の接線速度と中心へ向かう重力、円軌道を描いた模式図。
02 / FREE FALL

横向き速度で地球を回る

重力で曲げられる進路の曲がり方と、地球ちきゅうの丸みがちょうど一致すると円軌道になります。

軌道上でも地球の重力は強く働いています。

二度の推進で低円軌道から高円軌道へ移るホーマン遷移模式図。
03 / TRANSFER

進む向きに加速すると楕円へ

円軌道上で進行方向へ短く加速すると、通常は加速した地点を近地点とする楕円軌道になります。

遠地点でもう一度加速すれば、より高い円軌道へ移れます。

摂動で円軌道から少しずれ補正噴射する衛星の模式図。
04 / REAL WORLD

現実の軌道は少しずつ変わる

地球ちきゅうは完全な球ではなく、低軌道には薄い大気があります。月つきや太陽たいようの重力も軌道を乱します。

計画では燃料・観測・安全余裕も必要です。

TOUCH AND DISCOVER

高さ・横向きの速さ・噴射で軌道が変わる

高度・最初の接線速度・進行方向への瞬間的な加速Δvを選びます。円・楕円・衝突・脱出のどれになるかを計算し、未来の軌道を図に描きます。

EARTH-CENTERED 2-BODY MODEL円に近い軌道
地球の大きさ・軌道半径は線形スケール初期位置軌道予測円軌道の基準

薄い大気は無視。地球と交差する経路・遠くへ飛び出す経路も試せます。描画範囲から出る軌道は途中で切れます。「動かす」では、計算した経路上の位置を一定の時間ごとに表示するので、地球に近いところほど速く動くのが分かります(時間は大きく早送り)。

同高度の円軌道速度7.67 km/s
噴射後の横向き速度7.67 km/s
近地点の高度約 400 km
遠地点の高度約 400 km

円軌道速度に近いため、地球の周りをほぼ円形に自由落下します。

LEARN AT YOUR LEVEL

宇宙のふしぎを、もう少し。

入門から少し専門的な話題まで。4つの段階で、知っておきたいポイントを短く紹介します。

入門

衛星は「落ち続けて」いる

重力が消えるから落ちないのではなく、地球ちきゅうの丸みに沿って落ち続けるから回れます。

  • 横向きの速さが足りないと地面に向かって落ちる。
  • 十分な横向き速度を与えると、地球ちきゅうにぶつからず回り続けることがある。
基礎

円軌道は速さと高さで決まる

同じ地球ちきゅうなら高度が低い円軌道ほど必要な横向き速度は大きくなります。

  • 円軌道速度 v = √(μ/r)。rは地球ちきゅう中心からの距離。
  • 重力は進路を曲げる向心加速度を生む。衛星えいせいをその場に止めて支える力ではない。
  • 高度400 kmの円軌道なら約7.67 km/sで約92分に1周する。
発展

前進加速で遠地点を上げる

低い円軌道で進行方向へ加速しても、加速した地点の高度がすぐに上がるわけではありません。

  • 短い加速は軌道エネルギーを増し、ふつうは反対側の遠地点を押し上げる。
  • 遠地点でもう一度加速すると高い円軌道へ移れる(ホーマン遷移)。
  • 進行方向と逆向きの加速(減速)は、運動エネルギーを減らして反対側の近地点を下げる。
専門

エネルギー・角運動量・摂動

二体近似では、速度と位置で新しい軌道を決められます。

v_circular = √(μ/r) ; ε = v²/2 − μ/r ; e² = 1 + 2 ε h²/μ²

  • 比軌道エネルギー ε = v²/2 − μ/r。ε < 0 は束縛軌道、ε ≥ 0 は脱出軌道。
  • 角運動量 h = r×v を使い近地点・遠地点を計算できる。
  • 現実にはJ2摂動、大気抵抗、推力履歴などが軌道を変えるため補正が必要。

ラボで扱うのは、位置ベクトルに垂直な(接線方向の)速度とΔvだけ。地球への衝突は、近地点半径が地球半径以下かどうかで判定する。

1 QUESTION CHECK

図のあとに、1問だけ

衛星が地球を周回できる主な理由は?

答えを1つ選んでください。

COMMON QUESTIONS

よくある誤解

衛星はエンジンを止めると落ちる?
理想的には、適切な軌道に入っていれば止めても周回できます。現実の低軌道では薄い大気による抵抗があり、軌道維持が必要なことがあります。
進行方向へ加速したら、いまいる高さがすぐ高くなる?
短い接線方向の加速では、その瞬間の位置は変わりません。主に反対側の遠地点が変わります。
宇宙ステーションも重力に引かれている?
はい。約400 kmの高度でも重力は地表の9割弱あり、宇宙ステーションも乗員も一緒に自由落下しています。

科学的な前提と出典

高度・速度は、地球中心慣性系における架空の初期条件です。円軌道速度約7.67 km/s(高度400 km)は、μ=398,600.4418 km³/s²、地球の平均半径6,371 kmからの計算値で、実機の測定値ではありません。地球を点質量とした二体近似で、大気・地球の非球形・他の天体の重力・地球の自転は無視しています。見えている曲線は計算したモデルの経路です。

資料確認日:2026-10-16

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